2017年7月26日水曜日

命の志望理由書

白馬高校魅力化プロジェクト、そのプロジェクトを超えて公私に渡って
お世話になっていた冨原さんが5月25日に他界されました。
 
大切な白馬高校魅力化プロジェクトの仲間であり、同志であった方が
天に召されました。
 
僕がお会いした2年前からすでに闘病生活を送られていました。
不屈の精神で何度も元気になったのですが・・・
最期は家族や経営するホテルの仲間たち、そしてまちづくりをしている
多くの仲間たちに見送られたそうです。
 
冨原さんとの出会いは2015年3月。
僕が白馬村に呼ばれて講演をした時に、
白馬高校魅力化プロジェクトの住民側の中心メンバーとして
冨原さんはその場に、いらっしゃいました。
冨原さんが絶妙なタイミングで県会議員さんにも引き合わせてくれて、正式にプロジェクトメンバーとして認められました。
 
2015年夏あたりから白馬高校魅力化プロジェクト、そして
公営塾設置のお手伝いが始まった頃から、関わりがスタート。
白馬に行く時はいつも冨原さんが運営される「シエラリゾート」に宿泊させてもらいました。
白馬高校に行く時の密かな楽しみにはあの温かい冨原さんの世界観が詰まったホテルに
滞在することでした。
 
家族でもホテルに伺わせてもらい、楽しい、貴重な家族との、ひと時を過ごさせてもらったものです。
 
白馬高校国際観光科がスタートし、初年度は全国から地元から生徒が入学してきて
少しずつ軌道に乗り始めました。
 
白馬高校魅力化プロジェクト2年目、冨原さんの娘さんが大学入試に挑戦することになり
また冨原さんとお会いする機会は増えました。
何度も何度も話し合い、志望校を決めて、その後何度も、朝まで、または夜3時くらいまで、
皆でご自宅に籠って準備をしました。いつも気にしてくれて差し入れを持ってきてくれました。
限られた時間の中での対策。さすがの僕も楽観的ではいられなかった。
でも、あの屈託のない笑顔を覗かせてくれるだけで、安心し、勇気が出てきたことを
覚えています。隠岐島前から早稲田や慶應SFCに合格者を出した時以上のハードルも
彼の笑顔が「ひょい」と乗り越えさせてくれた気がします。
 
厳しいツッコミにも耐え、彼女の白馬や山への想いを込めた「志」が溢れ出て、
彼女と家族と白馬の命のかけら、分身のような出願書類が。
見せてもらった瞬間、「ぶるっ」と震えたことを覚えています。
「これはいけるかも」
そう思いました。
 
念願叶って娘さんが第一志望の慶應義塾大学に合格。
彼女が日本に帰国してから時間もない中での準備だったので、決して簡単ではなかったのですが
家族皆で頑張って、合格を勝ち取られました。
僕は久米島で観測史上最強の台風を体験した時に、何度も彼から電話があって
「もしや!」と思ったら合格の知らせでした。本当に喜んでくれていた様子が
電話からわかりました。僕もとても嬉しかった。白馬高校でやりきった感がありました。
 
「あまりにも嬉しくて、元気になっちゃた。寿命も伸びちゃった」
そんなこと言われたから、嬉しくて、恥ずかしくて、震えて、声が出なかった。
 
また、その後、家族で白馬に伺わせてもらったり、
「ねね、見て、腫瘍が消えちゃったんだよ、意外と僕、しぶといでしょう?」とレントゲン写真を見せて話くれた元気な冨原さんを見た時は本当に涙が出るほど、嬉しかった。
今年の3月にシーズンが始まった岩牡蠣春香を食べたり。念願だった娘さんの入学式に行ったり。思えば、僕も関わり始めて3年目。「
ああ、これはもしかするともしかしてしまうんではないか!」と期待をしていました。
 
でも、残念ながら、その想いは届きませんでした。
 
金曜日、大学へ向かう道すがら、訃報を知り、呆然としました。
目がかすむので、車を路肩にしばらく止めた。
 
お通夜の夜、ご家族に聞いたのですが、大学に出願した娘さんの志望理由書を
皆に見せて回っていたそうです。
娘さんは恥ずかしがっていましたが、本当に、娘さんがこんなことを書いてくれるなんて、
思ってくれるなんて、志を立てるなんて、嬉しかったのだと思います。
 
お通夜と告別式に参列。多くの方が見送りにきてくれました。
いろいろな方の弔辞から、白馬への想い、白馬高校への想い、そして家族や娘さんへの想いが伝わってきました。娘さんの大学合格をそんなに喜んでいてくれていたんだと、改めて知った同時に涙は止まりませんでした。
 
最後の喪主からの挨拶は二人の娘さんから。
本当に立派な、これからの覚悟が、想いが、父への愛情が伝わる挨拶でした。
 
父から娘に、しっかりと大切なことが受け継がれたと皆が確信したと思います。
 
白馬への想いが若い人たち”百馬力”に受け継がれ、娘さんの進路も決まり
晴れの姿を見届けて安心して、天寿を全うされたのだと思っています。
 
また、どこからともなく「また来ちゃったよ〜」なんて、屈託のない笑顔で
出てきてくるんじゃないかって、思っています。
 
いつまでも白馬を、白馬高校を、家族を見守っていてくださいね。
 
冨原さん、今日も山は綺麗ですよ。
山を見守りつつ、安らかにお眠りください。
 
本当にありがとうございました。
 
いつか天国で、現世ではできなかったけど
お酒を呑みながら語りましょうね。